『横須賀歌麻呂のYARIMAN HUNTERほのぼの撮影日誌』vol.15
- 2021/05/07
- 01:41
4月19日 木曜日 晴れ
撮影15日目。
※撮影15日目と撮影16日目の日記を取り違えていたので訂正させていただきました。失礼しました。
本日はラストシーンの撮影でした。
まだ撮影はたくさん残っているのですがスケジュールの関係上このタイミングでのラストシーンの撮影となりました。
映画の撮影は、物語の時系列通りに撮影を進めていく「順撮り」という方法で撮影ができたら理想的なのですが、予算やスケジュールなどの効率性を考えると順撮りで撮影するのはなかなか難しいんです。
出演シーンがそれほど多くない出演者に出演シーンの度に何回も来てもらうとなると拘束期間も長くなりギャラも嵩んでしまうので、その出演者の出演シーンを一日ですべて撮り切ってしまう方が何かと都合がいいんです。
といった具合に映画製作ではそういった諸々を考慮した上で最も効率的で無駄のない撮影スケジュールを組み上げてから撮影に入るのですが、我々映画製作未経験のチェリーボーイッシュな製作陣は予算に見合った撮影スケジュールを組まないというとても画期的な
"何とかなるっしょ!方式"
で場当たり的に撮影を始めてしまいました。
当然段取りがメチャメチャなので映画製作は難航しまくり頓挫しまくりで何度もピンチが訪れます。
でも真っ当に予算に見合ったスケジュールを組んでいたら本来作りたかったものとはかけ離れたものを作ってしまっていたかもしれません。
行きたかった場所とは全く違う風景の場所に辿り着いてしまっていたかもしれません。
出たとこ勝負で撮影を始めてしまった以上はもうなんとかするしかありません。
やるしかありません。
映画も結婚とかといっしょで、時には酔った勢いでやっちゃって、中出ししちゃって、出来ちゃって、すったもんだあって、結果的にはあれで良かったという場合もあると思います。
まだ早いとか機が熟してからとか条件が揃うのを待っていたらタイミングを逃しちゃって歳だけくっちゃって黄昏れちゃってる人も少なくないと思います。
真由子は悔やんでいた。
こんなはずじゃなかった。
二十代の頃はそれなりに恋愛を楽しんだ。
そのうちに自分にも落ち着く時が来るのだろうと漠然と思っていた。
気がつけば三十半ばを過ぎて独り身。
週末の予定は何もなかった。
結婚してもいいかなと思った瞬間もあった。部屋を出て行った彼を追いかけようとして立ち止まった事もあった。ありふれた誘惑に抗えずに過ちを犯した事もあった。
分岐点はいくつもあった。
自分で決めて歩いて来た道。
そうやって辿り着いたのはただただ自由なだけの空虚な場所だった。
あの時勇気を出していれば。あの時真っ直ぐに帰っていれば。あの時フェラの動画撮影を拒否していれば。あの時クンニ中に寝なければ。あの時ちゃんとマン毛を処理していれば………
後悔は11月の雨と共に傘のない真由子に降り注いだ。
夜の闇に冷たく輝く雨を轢き裂きながら幾つものヘッドライトがすぐ横を排他的に駆け抜けてゆく。
ふと気配を感じて濡れた顔をあげた。
目の前の闇の中をホームレスとおぼしき老人が歩いて来た。
全身ズブ濡れのその年老いた男はひどく腰が曲がり、手は小刻みに震え、足取りは覚束ないものだった。
それはまるでこの夜の悲しみを一身に引き受けようとしているかのような無残な姿だった。
行くあてもなく彷徨うように足を運んでいた老人がおもむろに顔をあげた。
真由子の暗い瞳に老人の暗い瞳が映ったかと思うやいなや、老人はよろよろと足を縺れさせながら車道の方へと逸れて行った。
考えるよりも先に体が動いていた。
車道にはみ出した老人を引き戻そうと飛びついたその刹那、迫り来るヘッドライトの容赦のない光が全てを埋め尽くした。
そして全てが消えた………
椅子からずり落ちそうな感覚に体が反応して目が覚めた。
トイレの便座に座っていた。
車椅子の人が使用する広めのトイレだ。
視線を巡らせてみると眼下にある自分の乳房が露わになっている。
何も着ていない。
思わず立ち上がる。
何がどうなってるの?何が起こったの?
覚醒前の最後の記憶を辿る。
環状7号線。逸れてゆく老人の暗い瞳。絶望的なスピードで迫り来るトラックのヘッドライトがSF映画のUFOのような強力な光量で全てを埋め尽くした。それが最後の記憶。そしてどこかのトイレで裸で目が覚めた。
夢を見てるの?
ふとぼうぼうのマン毛に目が止まる。
甦る切ない記憶。あのとても暑かった夏の夕暮れ。燃えるような西日に紅く染められた白いパンティが脱がされる。曝け出された私のぼうぼうのマン毛の中で蚊が一匹絡まって死んでいた。蒼く沈んでゆく空の色と共にひとつの恋が終わった。そして私はエステに行ってマン毛を永久脱毛した。
あれ以来私の股間はツルツルだ。
やっぱりこれは夢なんだ。
試しにマン毛を無造作に数本つまんで力任せに引っ張ってみた。
「んあ“!!!!!」
激痛と共に5本抜けた!
夢じゃないの ⁈ そんなバカな ⁈
そんな筈はない。でもすごくリアルな痛さだ。
どういうこと?私どうなっちゃったの?私じゃなくなっちゃったの?
手洗台の前に行き鏡の中の自分を見た。
鏡の中にいたのは私だった。
でもそれは若い頃の真由子だった。
10年くらい前の若々しい私の姿がそこにあった。
不規則にゆるく柔らかなカーブを描いているキャラメル色の髪が肩先で跳ねている。この髪型は確か「九頭龍」との黒歴史の頃の髪型だ。
九頭龍…
え ⁈
ちょっと待って⁈ このトイレ? もしかしてあの時のトイレ?
振り返って改めてトイレを見回す。
そうだ、間違いない、あのトイレだ。
あの時、九頭龍に裸のまま放置されたサービスエリアのトイレだ。
心の奥深くに封印した忌まわしいあの事件。
あの頃、私は九頭龍とのアブノーマルなプレイにのめり込んでいた。
あの時もサービスエリアのトイレに全裸で放置されてほんの短い時間だけ倒錯した欲情を味わうつもりだった。
しかし、九頭龍は私を放置したまま2度と戻って来なかった。
そして私はとんでもない事になったのだった………
《 続く?》
スポンサーサイト